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美容室を開業したら「節税に強い税理士」より「経理を丸投げできる税理士」を探したほうがいい

美容室を開業するとき「節税に強い税理士を探しています」と言われるけれど

美容室の開業を控えた方や、フリーランス美容師として独立を予定している方との打ち合わせで、こう言われることがあります。

「節税対策に強い税理士さんを探しているんですが、どこかいいところありませんか?」

気持ちはよくわかります。せっかく自分で稼いだお金を税金で持っていかれるのは誰だって嫌です。だから少しでも税金を減らしてくれる税理士を見つけたい。その発想は自然です。

ただ、開業当初に「節税」を最優先に考えるのは、順番が違うと思っています。

美容師が独立1年目に節税で減らせる金額を見てみる

たとえば、業務委託で働くフリーランス美容師の方が独立1年目を迎えたとします。

  • 年間売上:500万円
  • 経費(材料費・交通費・通信費など):150万円
  • 差引き事業所得:350万円

この所得に対する税金は、所得税・住民税・事業税を合わせてざっくり70万円くらいです。ここから「節税」で減らせる金額はどのくらいか。代表的な制度を見てみます。

制度年間の上限節税効果(税率20%の場合)
青色申告特別控除65万円約13万円
小規模企業共済84万円約17万円
iDeCo(個人型確定拠出年金)81.6万円約16万円

青色申告特別控除は、青色申告をすれば誰でも使える制度です。節税テクニックというよりも、やって当たり前のことです。どの税理士に頼んでも対応してくれます。

小規模企業共済とiDeCoは、掛金がそのまま所得控除になるので節税効果は大きいように見えます。ただ、お金を将来のために積み立てているだけなので、今の手取りが増えるわけではありません。

では「経費を増やして節税する」はどうか。税率が20%なら、1万円の経費を増やしても節税できるのは2,000円です。残りの8,000円は消えます。手元に残るお金はむしろ減ります。

つまり、開業初年度にできる「節税」は、青色申告・小規模企業共済・iDeCoといった定番の制度をきちんと使うことに尽きます。これはどの税理士に頼んでもやってくれます。「節税に強い税理士」をわざわざ探す必要はありません。

美容室の開業時、税理士を選ぶ基準は何か

開業当初にもっとも大事なのは、経理業務をできる限り軽くして、本業に専念できる環境を作ることです。

美容師にとっての本業は、お客様の髪を切ることです。スタッフを育てること、集客の仕組みを作ること、リピーターを増やすこと。売上を立てる活動に時間を使わないと、事業は軌道に乗りません。

ところが独立すると、今まで雇われていたときにはなかった作業が降ってきます。

  • 領収書の整理
  • 帳簿への記帳
  • クレジットカード明細の照合
  • 決済サービスの入金確認
  • 確定申告書の作成

これらを自分でやろうとすると、毎月数時間、確定申告の時期には丸数日を経理作業に取られます。その時間は、施術にも集客にも使えません。

だから、税理士を選ぶ基準は「節税に強いか」ではなく、経理を丸ごと任せられるかどうかです。

確定申告を丸投げして本業に専念できる環境の作り方

では、具体的にどうやって環境を作るのか。やることは3つです。

1. クラウド会計で取引データを自動取込

クレジットカードや銀行口座をクラウド会計に連携すれば、取引明細は自動的に取り込まれます。仕訳の入力をお客様にお願いすることはありません。取り込まれたデータの仕訳はすべて税理士が行います。

2. 紙の書類は、レターパックに入れて送るだけ

現金で払った領収書やレシートなど、クラウド会計では拾えない紙の書類は、税理士事務所から届くレターパックに入れて返送するだけです。日付順に並べる必要もありません。スキャン(撮影)も不要です。届いた書類のスキャンは税理士側で行います。

なお、マネーフォワード会計をお使いの場合は「マネーフォワード経費」で領収書を撮影して経費申請を上げることもできます。この方法なら書類を郵送する必要すらありません。スマホで撮るだけで税理士側にデータが届きます。

最初はレターパックで始めて、慣れてきたら経費アプリに切り替える、という段階的な移行も可能です。業務フローはお客様のやりやすさに合わせて柔軟に組み立てていきます。

3. 確認作業は「OK」と返事するだけ

会計データの確認依頼と確定申告書の確認依頼が届いたら、内容を見て「OK」とチャットで返すだけです。

たったこれだけの仕組みを整えるだけで、経理に費やす時間はほぼゼロになります。

当事務所の丸投げ対応の詳細は、こちらの記事でまとめています。

美容室の確定申告の裏側——記帳代行で税理士が実際にやっていること

「丸投げ」と言うと簡単に聞こえますが、裏側ではかなりの作業が動いています。

下の図は、ある美容室オーナーの確定申告で当事務所が実際に行った作業の全体像です。

確定申告の裏側

お客様にやっていただいたのは3つだけ。書類をレターパックで送ること、会計データを確認すること、申告書を確認すること。それ以外の作業は、すべて当事務所が行っています。

各フェーズで何をしているか、もう少し具体的に書きます。

資料整理・データ取込

届いた書類をスキャンしてデータ化し、ファイル名をリネームしてGoogleドライブに格納します。「IMG_20260301_001.jpg」のままでは後から探せないので、「20260115_ビューティガレージ_カラー剤仕入_32400円.jpg」のように中身がわかる名前をつけます。

固定資産の計上が必要な場合は、資産の種類・耐用年数・償却方法を判定します。たとえば、ボイラーの設備工事費79万円は「建物附属設備/給排水・衛生設備」に分類し、耐用年数15年の定額法で処理します。

決済データ処理

美容室では、クレジットカード・PayPay・現金と複数の決済手段を使っていることがほとんどです。決済手段ごとに入金の主体が違います。クレカは決済会社から、PayPayはPayPayから、現金はお客様から直接。それぞれ入金のタイミングも手数料率も異なるので、売上を決済手段別に分けて記録する必要があります。

当事務所では、お客様に営業日報のスプレッドシートを共有しています。やっていただくのは、1日の営業が終わったら売上合計を決済手段別に入力するだけです。

日付技術売上店販売上クレカPayPay現金
10/135,8009,1304,40025,850
10/231,0004,18011,33018,590
10/334,40024,6609,6803,500

ここで厄介なのが決済手数料です。クレジットカード決済の場合、売上から手数料を差し引いた金額が銀行口座に入金されます。たとえば売上9,130円でも、手数料3%が引かれて実際の入金は8,856円になる。つまり、通帳の入金額だけを見て仕訳を起こすと売上が過少になります。正しい仕訳を作るには、入金額に手数料を足し戻して本来の売上を復元し、手数料を支払手数料として別に計上する必要があります。

これを1件ずつ手作業で照合していたらキリがありません。当事務所では、決済サービスの管理画面へのログイン情報を共有していただき、入金明細データを一括で取得します。営業日報のデータと突き合わせて仕訳を生成する作業は、業務の自動化フローに組み込んで処理しています。お客様にこの照合作業をお願いすることはありません。

仕訳整理

仮払金として処理されている取引を正しい勘定科目に振り替えます。シェアサイクルの利用料は旅費交通費、通信サービスの利用料は通信費、といった具合です。

労働保険料は「前払費用+法定福利費+一般拠出金」に分解します。リクルートの月額利用料やポイント付与分も、広告宣伝費として正しく計上します。

BS検証(貸借対照表の検証)

帳簿の全科目について期末残高を算出します。マイナス残高になっている科目がないか、期末に残高が残るべきでない科目に残高がないか、一つずつ確認します。異常値が見つかったら原因を調査して修正仕訳を起こします。

決算整理

期末の棚卸資産(在庫)の評価、礼金の償却、前払費用の計上・戻し、未払費用の計上、減価償却費の計算——これらをすべて処理します。

申告書作成・電子申告

決算データを確定申告書作成ソフトにインポートし、ふるさと納税や社会保険料控除などの控除情報を反映します。ふるさと納税のXMLデータを解析して寄附先や金額を取り込む作業もあります。最後にe-Taxで電子申告を行い、申告書のPDFをGoogleドライブに格納して完了です。


これが「丸投げ」の裏側です。作業項目は全部で20を超えます。

この作業を自分でやろうとしたら、週末が何日つぶれるか想像してみてください。そして、その週末を施術の予約に充てていたら、いくらの売上になっていたか。

美容室の節税は、売上が安定してから考える

繰り返しになりますが、開業初年度に注力すべきは売上を立てることです。

売上が安定してくれば利益も増えます。利益が増えれば、そのとき初めて「節税」が意味を持ち始めます。

  • 所得が900万円を超えたら、法人化を検討する時期です
  • 法人化すれば、役員報酬の設定や退職金制度の活用など、個人事業にはない節税の選択肢が出てきます
  • 利益が十分に出ていれば、設備投資や人材投資で事業を拡大しながら、結果的に課税所得を圧縮できます

節税は、稼いでから考えればいい。稼ぐためには、まず本業に集中できる環境を作る。その環境づくりを手伝ってくれる税理士を選ぶ。これが開業時の正しい順番です。

当事務所のサポート

「確定申告は丸投げして、自分は施術と集客に専念したい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。経理の負担をゼロに近づける仕組みを、一緒に作ります。

丸投げの具体的な流れと料金は、こちらをご覧ください。

サロンの税務、一緒に整えませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人・コンサルティング会社を経て独立。休日はフィルムカメラを持って街を歩き、東京の風景や環境音を記録しています。「数字の仕事」と「手を動かしてつくること」の両方が好きな会計士です。美容師の方が施術に集中できるよう、面倒な税務は全部引き受けます。

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