そもそも源泉所得税とは
スタッフに給与を支払うとき、額面がそのまま手取りになるわけではありません。給与からは社会保険料や源泉所得税、住民税が天引きされます。このうち源泉所得税は、オーナーが「スタッフ本人に代わって」国に納める税金です。
大事なポイントは、源泉徴収は法律で定められた義務だということ。「事務が大変だからスタッフに自分で申告してもらおう」は通用しません。試用期間中のスタッフやアルバイトであっても、給与を支払う限り源泉徴収が必要です。
毎月の源泉所得税の計算手順
源泉所得税の金額は、国税庁が公表する「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で求めます。手順は次のとおりです。
- 給与の総支給額を出す — 基本給、歩合給、技術手当、残業手当などを合計する
- 非課税の交通費を引く — 月15万円以下の通勤手当は非課税
- 社会保険料を引く — 健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の本人負担分を差し引く
- 税額表を確認する — 上記の金額と扶養親族の数をもとに、該当する欄の税額を読み取る
計算例(2026年・令和8年の税額表)
たとえば基本給25万円、歩合給4.1万円、技術手当2万円、残業手当2.4万円、交通費9,800円のスタッフ(扶養親族なし)の場合を見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総支給額 | 344,800円 |
| 非課税交通費 | -9,800円 |
| 健康保険料(本人負担) | -16,830円 |
| 厚生年金保険料(本人負担) | -31,110円 |
| 雇用保険料(本人負担) | -1,034円 |
| 課税対象額 | 286,026円 |
課税対象額286,026円を税額表の「284,000以上287,000未満・扶養親族0人」に当てはめると、源泉所得税は月額7,820円前後になります(令和8年分の税額表で確認してください)。
なお、2026年(令和8年)1月から新しい税額表が適用されています。基礎控除が48万円から58万円に引き上げられた影響で、従来の表をそのまま使うと税額がずれるため、必ず最新の税額表に切り替えてください。
納付期限と「納期の特例」制度
源泉徴収した所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに税務署へ納付します。ただし、美容室のように常時10人未満のスタッフで運営しているお店は「納期の特例」を使えます。
| 項目 | 原則 | 納期の特例 |
|---|---|---|
| 対象 | 全事業者 | 給与支給人員が常時10人未満 |
| 納付回数 | 毎月(年12回) | 年2回 |
| 1〜6月分の納期限 | 各翌月10日 | 7月10日 |
| 7〜12月分の納期限 | 各翌月10日 | 翌年1月20日 |
| 届出 | 不要 | 「納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出 |
年2回の納付にまとめられるのは事務負担の面で助かりますが、半年分を一括で納めるため、まとまった金額になります。たとえばスタッフ5人で毎月の源泉所得税が合計3万円なら、半年で18万円です。「納付月になって資金が足りない」とならないよう、毎月分を別口座にプールしておくのがおすすめです。
納付が遅れたときのペナルティ
源泉所得税の納付が1日でも遅れると、次のペナルティが発生します。
- 不納付加算税 — 納付額の10%(税務署の通知前に自主的に納めた場合は5%)
- 延滞税 — 納期限の翌日から年2.4%程度(2か月超は年8.7%程度、令和7年の特例基準割合で計算)
ただし、納期限から1か月以内に自主納付し、過去1年間に納付遅れがなければ不納付加算税は免除されます。うっかり忘れに気づいたら、できるだけ早く納めることが大切です。
当事務所のサポート
源泉所得税の計算は毎月のことなので、正確さと手間のバランスが求められます。当事務所では、美容室の給与体系に合わせた源泉徴収の設定、クラウド会計との連携、納期の特例の届出まで対応しています。「給与計算が合っているか不安」という方は、お気軽にご相談ください。
