物件選びの前に決めておくこと
美容室の物件を探し始めると、駅からの距離や賃料に目が行きがちです。でも、物件探しの前にやっておくべきことがあります。自分がやりたい店の規模感を固めることです。
セット面の数、シャンプー台の台数、待合スペースの広さ——この3つが決まると、必要な坪数が見えてきます。1人で始めるサロンなら10〜15坪、セット面3〜4面で15〜20坪が目安です。ここを決めずに物件を見て回ると、「なんとなく良さそう」で契約してしまい、あとから内装で苦労するケースが少なくありません。
物件を見つけてから事業計画を考えるのではなく、事業計画ができてから物件を探す。この順番が大事です。
居抜きとスケルトン、どちらを選ぶか
物件のタイプは大きく「居抜き」と「スケルトン」に分かれます。それぞれの特徴を整理します。
| 項目 | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
|---|---|---|
| 内装工事の坪単価(目安) | 15万〜40万円 | 40万〜70万円 |
| 20坪の場合の内装費用 | 300万〜800万円 | 800万〜1,400万円 |
| 工事期間 | 2〜3週間 | 1ヶ月〜1ヶ月半 |
| レイアウトの自由度 | 低い | 高い |
| 前テナントの影響 | 受けやすい | なし |
居抜き物件は初期費用を抑えられるのが一番のメリットです。ただし、前のサロンが残した配管をそのまま使うので、シャンプー台の位置を変えるだけで配管工事が追加で50万〜100万円かかることもあります。
スケルトン物件は費用がかさむ分、自分の理想どおりの動線を作れます。10年以上使う場所なので、長い目で見るとスケルトンの方が良かったというオーナーも多いです。
どちらが正解ということはなく、手元の資金とこだわりのバランスで決めるのが現実的です。
見落としがちなインフラ設備のチェック項目
物件の見学で外観や広さばかり気にして設備を見ていなかった——これはよくある話です。美容室では、水道・電気・ガスの設備状況が内装費用に直結します。
水道(給排水) — シャンプー台を複数台使う美容室では、引込水道管の口径は20mm以上が目安です(物件や自治体の基準により異なります)。古いビルでは13mmのまま残っていることがあり、シャンプー台2台を同時に使うと水圧が足りません。口径を太くする工事だけで30万〜50万円かかるので、契約前に確認してください。
電気 — ドライヤーは1台あたり約1,200〜1,500W(15A相当)を消費します。セット面3台なら、ドライヤーだけで45A。これにエアコン・照明・給湯器を加えると、最低でも60A、余裕を持つなら100Aは欲しいところです。電気容量が足りないと営業中にブレーカーが落ちるという最悪の事態になります。
ガス — 都市ガスかプロパンガスかで月々のランニングコストが変わります。プロパンガスは都市ガスの1.5〜2倍の料金になることもあるので、物件の段階で確認しておきましょう。
内装工事の見積書でチェックすべきポイント
内装業者の見積書に「工事一式 ○○万円」とだけ書かれていたら要注意です。内訳がわからないまま契約すると、追加費用のトラブルにつながります。
確認したい項目は次の5つです。
- 設備工事と内装工事が分かれているか — 電気・給排水・空調の設備工事と、壁・床・天井の仕上げ工事は別物です
- シャンプー台の費用が含まれているか — 内装費と思い込んでいたら別見積もりだった、というケースは多いです。シャンプー台は1台40万〜80万円するため、漏れると大きな誤算になります
- 保健所の構造設備基準を満たしているか — 作業室と待合の区分、床材の防水性、消毒設備の流し台など、保健所の検査に通らないと開業できません(基準は自治体条例で異なるため、管轄の保健所に事前確認が必要です)
- 原状回復の条件 — 退去時に元に戻す費用がどこまで発生するか、契約書と照らし合わせて確認します
- 追加費用の発生条件 — 工事中に想定外の事態(配管の劣化など)が見つかった場合の費用負担がどうなるか、事前に取り決めておくと安心です
2〜3社から相見積もりを取って比較すると、相場感がつかめます。
当事務所のサポート
物件と内装は開業費用の中で最も大きなウエイトを占めます。ここで予算がふくらむと、運転資金が足りなくなり資金繰りが苦しくなるパターンに陥りがちです。
当事務所では、物件の契約前に内装見積もりと事業計画書の整合性をチェックしています。「この見積もりで融資は通るか」「運転資金はいくら残すべきか」といった判断は、税理士へ早めに相談することで精度が上がります。お気軽にご連絡ください。
